カザフスタン動乱が収まり撤退のために行進するロシア軍主体の平和維持活動部隊(CSTO)、1月13日、写真:新華社/アフロ

プロローグ/カザフ騒乱

 旧ソ連邦(ソビエト社会主義共和国連邦)は15の民族名を冠する共和国から構成される共和国連邦でした。

 ソ連邦は1991年12月25日に解体され、15の民族名を冠する共和国は名実ともに独立。カザフ・ソビエト社会主義共和国は新生カザフスタン共和国として独立しました。

 そのカザフスタンでは年初に燃料価格高騰による暴動が発生、暴動は銃撃戦にまで発展しました。

 筆者は、今回のカザフ騒乱は反トカーエフ大統領派によるクーデター未遂事件と考えます。

 ヌルスルタン・ナザルバエフ大統領辞任後カザフスタンは二重権力状態となり、この二重権力の混乱の中で、今回のクーデター未遂事件が発生したと考えるのが合理的です。

 しかし、あまり知られていないと申しますか、日本ではほとんど報じられていない事実もあります。

 本稿では今年1月2日に始まるカザフ騒乱の背景と本質、今回の騒乱が近隣諸国にどのような影響を与えるのか、筆者の独断と偏見と想像を交えて仮説を展開したいと思います。

カザフ騒乱の本質

 今回のカザフ騒乱は、30年以上にわたり溜まりに溜まったマグマが一気に噴出した感じです。

 問題は自然噴火か、誰かが導火線に火をつけたかのどちらかです。現時点ではどちらか確証はありませんが、状況証拠より判断するに後者の可能性が高いと言えます。

 では、今回のカザフ騒乱の本質は何でしょうか? 

 結論から先に書きます。カザフ騒乱の本質はナザルバーエフ前大統領側近派閥間の権力闘争(有り体に言えば“内ゲバ”)です。

 武力闘争になりましたので、クーデター未遂事件とも形容されましょう。

 トカーエフ現大統領もナザルバーエフ前大統領の側近であり、ナザルバーエフ派でした。

 ですから、トカーエフ現大統領がナザルバーエフ前大統領と対立したのではなく、ナザルバーエフ派内部の権力闘争と捉えることが合理的です。