建設を開始した時のノルト・ストリーム2((出所:露ガスプロム: https://www.gazprom.com/projects/nord-stream2/

プロローグ
ノルト・ストリーム②完工(2021年9月6日)

 ロシアの国策天然ガス会社ガスプロムは2021年9月6日、「ノルト・ストリーム②」完工を発表しました。

 ロシアのフィンランド湾からバルト海経由ドイツ向け天然ガスパイプライン、ノルト・ストリーム② の1本目は既に2021年6月4日に完工しており、2本目は9月6日に完工しました。

 本来ならばノルト・ストリーム②は2019年末までに完工予定でしたが、米国の圧力により当初の予定から1年9か月も遅れて完工した次第です。

 欧州のロシア産天然ガス依存度が高まるとして、米国はこの新規海底パイプライン建設に協力する西側企業に対し圧力(脅し)を掛けました。

 一方、米国は2019年からロシア産石油(原油+石油製品)の輸入が急増しています。

 欧州に対してはロシア産天然ガス輸入抑制を求め、自国はロシア産石油輸入を拡大するという矛盾した政策を推進しています。

 なぜでしょうか?

 本稿では既存のノルト・ストリームと新規建設されたノルト・ストリーム②を概観することにより、米国の対露経済制裁措置がいかに矛盾した政策であるか考察したいと思います。

 また、今回のノルト・ストリーム②完工に対しては、反露感情の強い欧米マスコミや、日本の反露を旨とする学者やジャーナリストからの批判・非難がメディアに登場することが予見されます。

 本稿において筆者は、旧ソ連邦と新生ロシア連邦から欧州向け天然ガス供給の歴史を概観することにより、上記のような批判・非難が根拠のないものであり、何らかの政治的意図をもった中傷にすぎないことを検証したいと思います。