東京大学名誉教授・医学博士の石川隆俊氏は『東大名誉教授の私が「死ぬまでセックス」をすすめる本当の理由(マキノ出版刊)』の中で、93歳の男性が薬を使わず現役でセックスを楽しんでいる様子を以下のように紹介している。
「奥さまが亡くなった後、現在は事務所の秘書(55歳、独身女性)とのセックスが癒し。歩行が少し不自由で、言葉を発する際に、時折くちごもるが、頭の働きは少しも衰えず、90歳を過ぎてもセックスは現役」
現実として人間の性
オーストリアの精神科医ジークムント・フロイト(1856–1939)は精神分析学を打ち立て、それまで性的行動が大脳との関連だったのに対し、全人格との関わり合いの中でとらえられるべき問題へと変換させた功労者である。
その理論は、従来の体験論的性行為を、科学としての性行為に座移りさせたことで、性行為を骨盤の問題から、心や精神といった全人格的な領域にまで昇華し、以降、性行為は科学として研究される一つの分野となった。
さらに米国では性科学者で動物学者のアルフレッド・チャールズ・キンゼイ(1894-1956)が社会統計学の観点から、人間の性の意識と行動について分析と解明を試み、広く公表したことで、性行為は社会科学として定着した。
キンゼイは米国の白人男女1万8000人に対し性に関する調査を行った。
そのキンゼイ・リポートは数年にも及ぶ膨大なアンケートと面接調査によるもので、それによると
「男性の約3割、女性の約2割が同性愛的傾向を備えている」
「女性も男性同様にマスターベーションをする」
「妊娠率に精子の勢いは関係がない」
「膣の収縮には肛門括約筋が関係している」
など従来のキリスト教的な信仰における性に対する観念に基づくあり方ではなく「現実として人間の性とはいかなるものなのか」を追究・検証し、性科学の分野の地平を開いた。
女性の性欲は生涯続くもので、大岡裁きで有名な大岡越前守は、ある日、裁きの参考のために、母親に「女性は何歳まで性的行為が可能か」と尋ねると、母親は目の前の火鉢の灰をかき混ぜた。
「灰・・・、灰になるまでか」。つまり、女性は生きている限り性交ができると大岡越前は、そのとき悟った、という言い伝えがある。