連載:少子化ニッポンに必要な本物の「性」の知識
「薪尽き火滅す」という言葉は古来より死滅することをあらわし、精神分析学において燃えさかる火は人間の原動力として関連づけられる。
また、火は性の象徴でもあり、古代語で「火所(ほと)」とは女陰のことを意味する。
『古事記』『日本書紀』では女性を山と見立て、女性器を山(女性)の麓の入り口である「山の御陰」で「やものみほと」といったメタファーで表現している。
生物における栄養摂取の欲動は「飢え」という言葉で表現される。だが性的欲求における性欲動を表現する日常語は存在しない。
オーストリアの精神科医のジークムント・フロイト(1856~1939)は性的欲求の性欲動をリビドーという言葉で表現した。
リピドーとはラテン語で憧れや欲望。ドイツ語で快感を意味する。
リピドーを起因とした男女の性合場面は私性に満ちた極めて個人的な領域に属する。
だからこそ、密かに行われるのが大前提で、それは性器の肉体的結合だけでなく、情感といった精神的昂揚、その他脇役の活躍も重視される。
なぜなら、性合とは、それらを複合的・総合的に愉しむことを目指すものであり、その場面となれば、裸の心と体のすべてが互いの目に露呈する。
当然、最もプライベート性の高い男根と女陰が露わになるのだが、同時に羞恥心をはじめとする様々な心の動きといった心理的なものから、それぞれのスタイルや性的嗜好といった実践面までもが相手の目前に曝される。