連載:少子化ニッポンに必要な本物の「性」の知識
人は休むとき、睡眠をとることを「眠る」といい、身体を横たえ気楽な形態になることを「寝る」と、その使い方は厳密に言えば区別されている。
では、「寝る」と「伏す」の違いはどうか。
「起きる」の反対の動作である「寝る」と「伏す」という言葉は昔から使われている。
そうした動作に限らず、寝床(ねどこ)や寝屋(ねや:ねやど)にあたる臥所(ふしど)や伏屋(ふせや)という言葉がある。
眠る時に使うのが掛け布団だが、古代ではこれを伏裳(ふすま)と呼んでいた。
伏裳とは「伏す」という動詞に「裳=着物」という名詞を繋げた言葉である。しかし、「寝る」という動詞に裳をつけて寝裳(ねも)とはいわない。
なぜか。
そもそも「寝る」という言葉にはもともと横になる以外に別の意味がある。
現在でも「彼女と寝た」というと彼女と性合したことを意味し、象徴的な隠語として使われている。
江戸時代、武家に限らず嫁入り前の娘には「女は決して仰向けに寝るものではない」と教えられていた。
「斜め横に寝て両足を揃えるようにやや曲げて寝る」「脚を開き寝乱れた姿をしてはならぬ」と躾けられ、年頃になると、両足を布で結い、正しく寝る訓練させられた。
かつては婚礼の初夜にも、新郎新婦がどちら側に並んで寝るかの決まりがあった。
これは右大臣・左大臣といった格式と同様に、男女の地位・格式の序列ともいわれる。