すると、宮廷では、純粋で愚直、孤高な自己凝視の精神のまま示寂した最澄に対する惻隠の情が一気に沸き上がった。
そして死後、僅か1週間で最澄の念願だった比叡山延暦寺に対し、朝廷から戒壇の勅許が下された。
戒壇とは、当時、僧になるには、戒壇で授戒して戒牒を受けることが必須条件であり、それは国の管轄であった。
それが、最澄の死後、朝廷から比叡山延暦寺に戒壇の許可が下ったということは、天台宗が国家仏教として承認されたことを意味する。
これを機に比叡山延暦寺は、天台法華宗の千年の繁栄の道を歩むことになる。
比叡山は日本最大の仏教教学の場となり、浄土宗の法然、浄土真宗の親鸞、時宗の一遍、日蓮宗の日蓮、臨済宗の栄西、曹洞宗の道元ら、数多くの鎌倉仏教の開祖を輩出した。
彼らは、それぞれが天台教学の影響を受けながらも、自ら教理を独創することで、中国から伝わった仏教ではない、日本独自の新たな仏教へと発展させた。
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