人は寿命が尽きれば、荼毘に付され灰となる。だが、その肉体の消滅をもって、その後は虚空に広がる「無」か、といえば、決してそうではない。
人が生きているということは、肉体を司る源となる何かが存在する。
世界の様々な宗教は、肉体は霊が形となり顕れたもので、霊と肉体が相俟って人間となる、と説く。
つまり人間とは神が編み出した生命の法則により、現象界の、この世に生まれ物質である肉体が消滅するまでの間、自由に活動するものである。
生きとし生けるものは母から生まれ、その母は、母の母から生まれた。では、生命の根本を遡り、何万、何億世代遡って突き詰めるとどこに行き着くのか。
地球上の生命の起源は、神の行為によるものとする説。地球上での無機物質が変異した結果との説。宇宙空間に浮遊する生物の芽胞が飛来し生命が誕生したという3つの説がある。
だが、最も現実的と思われる、無機物質が生物に変異したという説は、今まで一度も自然界で観察されたことがない。
また、実験室内で多くの科学者により無数の実験が繰り返されたにもかかわらず、無機物から生命体に移行したということは再現されていない。
古代ギリシアでは既に、万物の根源、宇宙の起源という考察が行われていたが、哲学者アリストテレス(前384年 - 前322年)は「動物は親の体から産まれる以外に物質からも生じることもある」と語った。
最近、ロンドン大学(UCL:ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)の研究チームは、カナダのケベック州で採取した岩石の中に約42億8000万年前の火山で湧き出た熱水噴出孔で活動した生命の痕跡を発見したと、英国の科学雑誌『ネイチャー』2017年3月2日号に発表した。
海底の泥である無生物質が熱せられて有機体(生命現象をもっている個体)となったというのである。