JOLED本社があるメットライフ神田錦町ビル(東京・千代田区)

 LG、サムスンの韓国勢が先行する有機EL事業。だが、そこに果敢に食い込もうとしている日本の有望企業がある。いずれも高い技術を誇るが、ビジネスで成功を勝ち取るためにはまだ壁もある。日本企業が有機ELの世界をリードすることはできるのか。技術経営の専門家である中田行彦氏が、キーマンへのインタビューを踏まえ分析した。(JBpress)

日本企業がリベンジする可能性は

 前回の記事(「有機ELで独走、韓国LGはテレビ市場の覇権を握るか」)でも書いたが、有機ELで、日本は韓国に完敗状態にある。

 テレビ用の有機ELパネルの生産を一手に請け負っているLGディスプレイは、2018年8月29日、8Kの有機ELテレビを開発したと発表した。もちろん世界初の快挙だ。日本のソニーやパナソニックも有機ELテレビを発売しているが、コア部材の有機ELパネルの供給は全量、LGに頼っている状態だ。スマホ用の有機ELパネルは、サムスン電子に独占されている。

 韓国勢に大きく水をあけられた日本メーカーにリベンジのチャンスはあるのだろうか? 筆者は「可能性はまだある」と確信している。

 実は、有機ELパネルの生産には3つの方式がある。その中で、もっともコスト面で強みがある「3色印刷方式」はまだ量産体制が築けていない。だが、この3色印刷方式で先陣を切っている会社が、日本の「JOLED」(ジェイオーレッド)なのである。

 2007年に世界で初めて有機ELテレビを市場に投入したソニー。2006年から「3色印刷方式」を研究するパナソニック。両社の有機EL事業を統合して、2015年に設立されたのがJOLEDなのだ。

 また、新しい有機EL材料として期待されているのが、九州大学の安達千波矢教授が発明した「熱活性化遅延蛍光(TADF)」である。安達教授は、大学での基礎研究に取り組みながら、九州大学発ベンチャー「Kyulux」(キューラックス)で実用化に挑んでいる。Kyuluxは、LG、サムスン、JOLED等も出資する注目企業だ。