(聞き手:柳澤昭浩/文・写真:木口マリ)
「学会と患者会が協力して、日本の医療を変えていく」。近年では、そんなことも可能になってきています。しかし、治療法の急速な進歩の影には、「個々の理解度を上げていく必要性」や「現行の制度では対応しきれない点」などの問題点も明らかになってきました。
前回より引き続きお話をうかがうのは、日本肺癌学会理事長であり、次期世界肺癌学会理事長、近畿大学呼吸器外科主任教授の光冨徹哉先生と、日本肺がん患者連絡会代表、NPO法人ワンステップ代表で、ご自身も肺がん患者である長谷川一男さんのお二人。「治験」や「コンパニオン診断の問題点」についての対談です。(全2回/最終回)
治験は「生きる可能性を追求できるもの」のひとつ、しかし理解も必要
――第1回に引き続き、よろしくお願いします。「近年の肺がん医療は飛躍的に進歩している」というのは周知の事実ですが、お二人の実感としてはいかがでしょうか。
光冨:分子標的薬*1のひとつである「イレッサ」が登場した時は、とても衝撃的でした。それでも本当に効果のある患者さんは非常に少なかったんです。しかし、続いて登場した免疫チェックポイント阻害薬*2は、肺がん患者さんのうち2割程度の人にかなりの効果があり、中には治癒に近い人も出てきています。
先日のESMO(欧州臨床腫瘍学会)の学術集会で、また肺がん治療の歴史が変わるような発表がありました。来年も引き続き変わっていくような予感があります。治療の進歩という意味で、すばらしい時代が続いていると実感しています。
*1*2:分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬については「故 野際陽子さん、中村獅童さん、いときんさんを襲った肺腺がんとは? その治療法とは? 最新治療を専門医が解説! Vol.2 光冨 徹哉先生」を参照。