薬があっても使えない!? 今、“制度”に生じている問題とは?
――最近では、それぞれの体の特性に合わせた治療を行う「個別化医療」が話題となっています。「コンパニオン診断」という言葉も聞かれるようになりましたが、これはどのようなものでしょうか。
光冨:コンパニオン診断とは、患者さんの遺伝子異常などを検査し、特定の治療薬がその人に効きそうかどうかを判断するための診断のことを言います。「この検査で陽性にならないとこの治療薬が使えない」といった1対1関係になっており、したがって検査と薬が対で友達のようになっているということで、コンパニオンと言われます。
例えば、「A社の検査で診断したら(ア)という薬、B社の検査なら(イ)という薬、C社の検査なら(ウ)という薬を使う」というものです。「臨床試験がそのセットで行われていた」という理由で、実際の治療で使えるようになった時も、同様のセットを使う決まりになっています。
――一見、合理的に思えるコンパニオン診断ですが、最近では問題が生じているようですね。
光冨:セットが固定されてしまって、応用が効かないという点が問題になっています。例えば、A、B、Cの検査のいずれも、「実は、同じ遺伝子異常を調べている」という場合もあります。しかしAの検査をした人が(イ)や(ウ)の薬を使うことはできません。「Aの検査なら(ア)しか使えない」ということになってしまっています。
そのため、「Aの検査をして(ア)の薬を使っていた患者さんが、(ア)が効かなくなったために(イ)を使いたいという場合、たとえ(イ)が効くであろうと分かっていても、(イ)とセットのBの検査をしなおさないといけない」という事例が生じています。
また、最近話題の「次世代シークエンサー」のような、より精度が高くて簡単にできる検査が新たに開発されたとしても、それは(ア)(イ)(ウ)の薬とセットで臨床試験がされていないから使えない、ということになってしまいます。普通に考えると不合理ですよね。ここまで杓子定規になっているのは日本だけです(笑)。
――近頃は、EGFR阻害薬やALK(アルク)阻害薬のほか、「BRAF(ビーラフ)阻害薬」も登場してきています。ここでも同様な問題は生じているのでしょうか。