長谷川:これまでは、肺がんステージⅣの患者さんが「今を生きる」というと、逆に「未来は見られない」ということでした。しかし、新薬の登場により、「未来を見られるようになっている人がいる」という実例も身近に起こっています。
もちろん「今」を生きるのは大切だけれども、「未来から逆算して今がある」と考えることができるようになった。そんな治療ができるようになってきたと感じています。
――新薬の開発には、治験が必要不可欠です。患者さんの中には、「人体実験なの?」や「新薬ならいいに違いない」など、誤ったイメージを持っている方も多いようです。
長谷川:私が患者の一人として医療を学んで気づいたのは、「治験は治療の選択肢のひとつ」ということでした。「これ以上治療法がない時にやるもの」や「人体実験」ではなく、「患者として、自分が生きる可能性を追求できるもののひとつ」と考えてもいい時代になっています。
光冨:新しい薬の開発には、患者さんの協力が絶対に必要です。しかし、まずみなさんに知っていただきたいのが、治験というと「最新の良い治療」のように感じてしまわれるかもしれませんが、効果も安全性も確立されていない治療であり、必ずしも良い結果が得られるとは限らない、ということです。
治験というのは研究的側面があるので、常に良い結果になるとは限りません。「従来の治療法と新しい治療法を比較する試験」の場合は、治験に参加しても、新しい治療法に割り付けられない場合もあります。そのあたりの理解も必要ですね。
長谷川:患者も、現在ある治療法や治験など、選択肢を総合的に見て考えることが必要だろうと思います。でも、それがなかなか難しい。
現在のところ、治験の情報を得られる場や、それを丁寧に教えてくれるところもなかなかないですし、診察室で医師に尋ねる時間もありません。そのほか、治験は保険医療ではないので、それに対してどこまでやるかを考えるのも非常に難しいところです。