もう一つ、引っかかる点がある。一般的なフリーランス記者の資格として示されている、「日本インターネット報道協会法人会員社」が、「協会指定の報道機関」に含まれていないのだ。
昨今、インターネットを主な活動の場としている報道記者はたくさんいるのだが。「フリーランス」とは別に、「ソーシャルメディアクリエイター」=「1アカウントにつき10万人のフォロワーを持つ者」の枠をAD証に設け、SNS等インターネットの力を、インフルエンサーによる広報宣伝には活用しようとしているにもかかわらず、だ。
報道記者は「関係者」でいいのかという素朴な疑問
ここから透けて見える、報道・広報対応に関する協会の姿勢はこうだ。「報道」は、記者クラブメディアをはじめとする大手メディア・伝統的メディアに所属しているか、そうしたメディアの「長」からの推薦状がある者のみ。「広報宣伝」は、フォロワー数の多いSNSインフルエンサー。
すなわち、フリーランスの取材者は、基本的には想定もされていないし、歓迎もされていないのだろう。私のSNSアカウントに10万人のフォロワーがいたら「ソーシャルメディアクリエイター」枠で、「『長』の推薦状」など求められずにAD証が交付されたのだろうが、私のXアカウントには、残念なことに1.1万人しかフォロワーはいない。そもそも、私は「ソーシャルメディアクリエイター」でもない。
まあ、普通に入場券を買って会場に入って、自由に取材すればいいだけのことだ。AD証は「関係者」入場証であって、入場料がいらないというメリットはあるのだろうが、そもそも客観性や第三者性を重んじる「報道」の人間は本来ならば「関係者」ではないはずだ。
そういえば、参加費を求められるイベントの取材で、マスメディアの記者は参加費を求められずに入っていく一方で、フリーランスの私は、同じ「報道」であっても「報道機関」「マスコミ」ではないから参加費を求められる。そんなのは日常茶飯事なのだ。
ふと、駆け出しの新聞記者時代を思い出した。警察署の刑事部屋には「関係者以外立ち入り禁止」という貼り紙があるから入れないと伝えたら、先輩記者にこう言われた。「お前は関係者なんや! 関係者になって堂々と入れ!」。あれは正しかったのだろうか。そうやって考えを巡らすと、ますますモヤる。報道ってなんなんだろう、と。