公邸での会食が「政治的目的を持たない」わけがない

 総理は先程の産経新聞の記事によれば、記者との質疑応答で次のように述べ、政治資金規正法への抵触を否定している。

──総裁として会食に臨んでいる。政治活動でないというのは社会通念上理解を得られるか

首相「それはなぜ政治活動になりますか。自分自身、選挙をやってきて、まして初当選のときには言うに言われない苦労があったということだったと思っております。そのときに『厳しい選挙を戦った皆さん方に本当にご苦労さま』ということが、政治活動に当たるとは思っておりません

「ほんとうに選挙やれば分かりますけれども、多くの方々のご理解ご支持を得て、議席を得るというのは本当に大変なことだったと思っています。そういうことについて、公認をした総裁として、『ご苦労さま、ありがとう』ということでございまして、それは政治活動というものとは次元の異なるものだと思っておりますし、そういう意図も全くございません」(下線強調は引用者による)

石破茂首相の説明ポイント(図表:共同通信社)

 総理の「言い分」は、「ご苦労さま」という意味など私的な意図を強調するが、公邸での会食という態様を考慮すると、政治活動と切り離して説明するのは難しいはずだ。

 逆を考えてみればよい。

「自民党総裁でもある石破総理が公邸で、自民党に限って当選1回の議員全員と、正副官房長官と会食をする」行為が「政治的目的を持たない」とすれば、政治活動という概念自体が機能不全というほかあるまい。

 というのも、政治資金規正法は国民が政治とカネの流れを監視、批判し、疑惑を招かないようにすることを求めているのだから。

(目的)
第一条 この法律は、議会制民主政治の下における政党その他の政治団体の機能の重要性及び公職の候補者の責務の重要性にかんがみ、政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治団体の届出、政治団体に係る政治資金の収支の公開並びに政治団体及び公職の候補者に係る政治資金の授受の規正その他の措置を講ずることにより、政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする。

(基本理念)
第二条 この法律は、政治資金が民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であることにかんがみ、その収支の状況を明らかにすることを旨とし、これに対する判断は国民にゆだね、いやしくも政治資金の拠出に関する国民の自発的意思を抑制することのないように、適切に運用されなければならない。
2 政治団体は、その責任を自覚し、その政治資金の収受に当たつては、いやしくも国民の疑惑を招くことのないように、この法律に基づいて公明正大に行わなければならない。(政治資金規正法より引用。強調下線は引用者による)