基軸通貨ドルへの信任が揺らぎはじめた

 米国政府の独断専行が嫌気されて、信認が揺らぎつつあるドルが基軸通貨の地位を失うリスクが現実味を帯びる。

 トランプ氏は「ドル覇権の脅威となる国々に高い関税をかける」と恫喝しているが、自ら墓穴を掘ってしまうことになってしまうのかもしれない。

 米国経済にとっても大打撃だ。米国債が投げ売りされ、10年物の利回り(長期金利)が高騰するのは必至だからだ。

 長期金利は住宅ローンなどの借り入れコストに連動するため、豊かな米国の復活を目指すトランプ政権にとって「百害あって一利なし」だ。

 このように、トランプ政権が進める米国大改造計画は問題だらけだ。国際社会に大混乱をもたらさないことを祈るばかりだ。

藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。