市場が警戒するトランプ大統領の劇薬とは

 マネーの流出が災いして米国のクレジット市場(社債、証券化商品、信用リスクを原資産とする派生商品=デリバティブ=などを取引)が変調をきたしつつある。 

 クレジット市場は「流動性が低い」という弱点を抱えている。リーマンショックの震源地がクレジット市場であったことにかんがみれば、今後の動向には警戒が必要だ。

 米国例外主義を支える基軸通貨の発行という特権にひびが入っているとの指摘もある。

 サマーズ元米財務長官は3月6日放映されたブルームバーグのインタビューで「トランプ氏の移ろいやすい政策が、過去50年間にわたり世界経済の中心的通貨として機能してきたドルの役割に対する最大の脅威となっている」と危機感を露わにした。

 アメリカ・ファーストを声高に叫び、同盟国にも経済圧力をかける姿勢が災いして、通貨ドルが信認を失いかねないというのがその理由だ。

「泣き面に蜂」ではないが、「トランプ政権が強引な形でドル安を実現しようとしている」との憶測が流れていることもドルの信認にとってマイナスだ。 

 ブルームバーグは2月21日「ウォール街は『マールアラーゴ合意』を警戒している」と報じた。マールアラーゴ合意とはフロリダ州のトランプ氏の邸宅にちなんだ呼称だが、「ドル安を誘導するとともに米国政府の債務軽減を図る目的から、外国の債権者が保有する米国債を超長期国債に強制的に交換させる」というものだ。

 あまりに過激な内容であり、実現性は低いとされている。それでも、トランプ氏が「既存の金融システムをつぶしても構わない」と考え、実行に移す可能性は排除できないだろう。 

 だが、悪影響はあまりに大きいと言わざるを得ない。