もはや「リセッショントレード」ムード

 ベッセント氏が長年活動してきたウォール街でもトランプ関税の「朝令暮改」ぶりに対する悲鳴が上がっている。

 米銀最大手JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)は2カ月前、トランプ氏の関税政策を「使い方次第では経済的な武器になる」と擁護していた。だが、3月に入り「不透明性は望ましいことではない」と見解を改めた。

トランプ政権は鉄鋼・アルミに対して25%の関税を発動した(写真:ロイター/アフロ)

 JPモルガンは3月12日「米国が今年リセッション(景気後退)に陥る確率は40%程度、相互関税が発動されればそのリスクは50%以上に上昇する」との予測を明らかにしている。 

 物価高と景気悪化が同時に進む「スタグフレーション」のリスクへの警戒感が高まっており、市場は「トランプトレード」から「リセッショントレード」へと急速にセンチメントが悪化している感がある。

 トランプ政権による政策不況はたしかに心配だが、長年信じられてきた「米国例外主義」に疑問が投げかけられていることにも憂慮すべきだ。

 ロイターは3月5日「経済成長率や株価、人工知能(AI)分野の優位性が評価され、投資家の間で米国例外主義が共有されてきたが、その環境はこのところ急変しており、米国から本格的に資金が逃げ出す一大転換点が到来しつつある」と報じた。

 米国は1990年代以降、ドル高政策を通じて世界のマネーを集め、IT産業が主導する型で高成長を遂げてきた。米国の金融市場は情報の透明性が高く、「政府が予期せぬ形でルールに干渉してくることはない」との安心感から世界の投資家たちを魅了してきたが、トランプ政権のせいでその信頼感が大きく揺らいでいるのだ。