NATO以外は不可能

 結局はアメリカが構想したように、西ドイツの再軍備・NATO加盟という形で決着したのである。フランスも西ドイツの再軍備を承認し、1955年にはドイツ連邦軍が発足した。

 フランスは1948年のNATO発足時に加盟したが、ドゴール大統領は、1966年にNATOの軍事同盟からフランスを脱退させた。2009年3月に、サルコジ大統領は、フランスをNATOの軍事同盟に復帰させた。

 以上の第二次世界大戦後の歴史的経過を見ると、ヨーロッパ軍の形成が、いかに困難かが解る。

 ヨーロッパの安全保障を担保しているのはNATOであり、それに代わりうる欧州統一軍の形成は不可能である。アメリカ抜きでは、兵器、情報の面で、ヨーロッパの軍隊は動けない。

 したがって、NATO加盟が不可能ならば、ウクライナは欧州統一軍以外の選択肢を模索するしかない。イギリスのスターマーはヨーロッパ各国の軍隊が駐留するという考えを示したが、ドイツのショルツは、まだ議論するのは適切ではないと慎重である。マクロンも、アメリカとヨーロッパがウクライナの安全保障に協力すべきだと強調している。

2月20日、ホワイトハウスのX公式アカウントは、王冠をかぶったトランプ氏の画像に「国王万歳」とコメントを付けて投稿。王制ではない米国で大統領府がこのような投稿をしたことで大きな反発も起きている(ホワイトハウスのXより)
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 欧州諸国も、トランプの暴走に頭を悩ませているのである。アメリカとヨーロッパが離反し、NATOが機能不全を起こすなら、それはロシアが大喜びする事態である。トランプに、自由な民主主義の命運を委ねてよいのであろうか。