大統領令が覆されたケースは全体の何%か?

中村:大統領令の覆し方は他にもあります。たとえば、訴訟というケースがあります。第一次トランプ政権時代に「イスラム圏5カ国からの入国制限措置」という大統領令がありました。

──これはひどいとメディアが一斉に批判して、即座に大きなデモ運動も起きましたね。

中林:この行政命令は、各州の司法で実行が食い止められました。すべてが法律的にクリアになるまでストップとなったのです。州によって様々な法律体系があるので、大統領令といえどもハードルがあるのです。

──論争を引き起こす大統領令ほど阻止される可能性があるということですか?

中林:あまりにもクレイジーな大統領令が出されれば、議員たちの良識が働いて止めにかかる可能性があります。とはいえ、私が2017年に調べた時点では、大統領令が覆されたケースは、全体のわずか4%未満でした。議会によって覆されることはあるにはあるけれど、滅多にないということです。

 そして、大統領令には大統領の目指す方向性が示されている。この「示す」ということが大事なのです。

──今回の大統領令の中にはかなり強烈な印象のものもあります。後から阻止されることも承知の上で、パフォーマンスとして象徴的な内容の大統領令を出した可能性はありますか?

中林:あるかもしれません。ただ、阻止というのは少し言い過ぎで、議論にはなるものの、多少形を変えることで施行に至るケースなどもあるかもしれません。

 反発が多くて停止状態になった場合、それを必ずしも議論して修正して通そうと努力するとは限りません。大統領令には出していい数の上限はありませんから、「これだったら通るかな」という別のものを新たに出す可能性もあるのです。