
就任初日に大量の大統領令に署名したトランプ大統領だが、その内の一つに「言論の自由の回復と連邦政府による検閲を終結させる大統領令」がある。これは、SNSや出版物などに「誤報」「偽情報」「誤情報」が見られた場合、国がSNSの事業者や出版社に削除するよう求める検閲行為を「言論の自由」に反するとする大統領令である。
陰謀論やフェイクニュースがあふれる時代に、こうした対応はいかに社会を変えるのか。米ノースイースタン大学准教授(専門はメディアイノベーションとテクノロジー)のジョン・ウィビー氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──トランプ大統領が「言論の自由の回復と連邦政府による検閲を終結させる大統領令」に署名しました。これはどんな大統領令ですか?
ジョン・ウィビー氏(以下、ウィビー):大統領令は、省庁などの行政機関への行政命令です。そこには、米連邦捜査局(FBI)、司法省、商務省なども含まれます。この大統領令は、「あらゆるSNSやメディアの投稿や出版物に対して、政府は検閲や差し止めなどを一切行わない」という内容です。つまり、政府は民間の言論に介入しないと宣言しているのです。
──この大統領令によって、SNSでは何が変わっていくと想像されますか?
ウィビー:これまで、米政府とSNS事業者の間にはやり取りがありました。特に、警察や法律に関わる部分です。たとえば、FBIはSNS上に散見される金融詐欺や児童性犯罪、噓情報の拡散などを取り締まってきました。
疑いがある場合は、MetaやGoogle、YouTubeなどに連絡し、法の観点から問題のある情報が見られることを伝える。新型コロナウイルスをめぐる誤情報騒ぎで最高裁が判決を出したこともありました(※)。
※コロナ禍と2020年の大統領選挙期間中、政府関係者がSNS事業者に対して、誤解を招く可能性のある情報の削除を要請した。この対応に不服だったSNSのユーザー5人が2022年に提訴したが、米最高裁はこの訴えを棄却した。
今回の大統領令をもって、政府がSNS事業者との連携をやめるのか、まだ明らかにはされていません。一定のやり取りは続くと思いますが、誤情報の検閲は減るでしょう。
バイデン政権はこうした検閲に力を入れていました。特に、2021年1月6日の議会襲撃後は、いくつかのプラットフォームでトランプ大統領のアカウントが閉鎖になりました。この対応が許せなかった保守サイドが、SNS事業者と押し合う状況が続いていました。