SNS事業者のファクトチェックは続くのか?

──政府が検閲をやめても、SNS事業者のプラットフォームにおける独自のファクトチェックは今後も続くのでしょうか。

ウィビー:各企業の管理システムは残ります。すべてではありませんが、大きなSNSのプラットフォームは「Integrity」や「Trust and Safety」といった、コンテンツを問題のない範囲にとどめる管理チームを持っています。また、各プラットフォームは「Service Guideline」や「Community Standards」といった利用規約を持っています。

 Facebook、Instagram、WhatsAppなどは最近、このコンテンツ管理の量を軽減しています。ご存じのように、こうしたプラットフォームを運営するMetaのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏が、トランプ政権や議会からの追及や捜査を避けるため、政権寄りに方針を変えている影響だと言われています。

 Metaは「ファクトチェックをやめる」と言っていますが、何をどこまでやめるのか具体的なことは明らかにしていません。ランキングのアルゴリズムを使い、問題がありそうなコンテンツでも、ユーザーの視聴回数が一定以下であれば、大きな影響はないと見なして放置していくのかもしれません。

 YouTubeやGoogle、その親会社であるAlphabetはコンテンツを管理・監視するポリシーを保持しています。プラットフォーム事業者は露出の多いコンテンツ、暴力的なコンテンツ、テロリズムを見せるコンテンツなども制限します。YouTubeは特に厳しくて、そうしたものは非表示にしています。

トランプ政権に急旋回したメタのザッカーバーグ氏と、トランプ氏の懐に入り込んだイーロン・マスク氏(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)トランプ政権に急旋回したメタのザッカーバーグ氏と、トランプ氏の懐に入り込んだイーロン・マスク氏(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

──この大統領令は正しいと思いますか、危険な良くないものだと思いますか?

ウィビー:一般的な感覚でいえば、この大統領令は良くないでしょうね。もちろん、政府が一般事業者の出すコンテンツに「その内容は良くないので下げてください」と言うのは、私も含め、かなり違和感のある行為です。でも今の時代には、それが必要な場合もある。

 一つの問題は、なぜそのコンテンツが問題なのか、理由が十分に説明されてこなかったということです。どういう内容のコンテンツを、どういう審議を経て問題だと判断したのか、それを十分に説明しないで取り下げてしまう。この大統領令は、そうした問題意識を持っていて、その認識自体は正しいと思います。

 ただ、その問題提起を超えた影響も、この大統領令は発揮してしまいます。「SNS事業者に政府は関与しない」という意味に取られてしまえば、それは危険なことだと思います。

 政府がこれまでSNSの中で監視の必要性があると考えてきた対象には、ロシアや中国による、アメリカの安全保障を脅かす可能性のある偽情報の配信や詐欺、海外からのサイバーアタックといったデジタル空間上の不法行為や問題行為も含まれています。