より重大かつ深刻なAIファクトチェックの中止

ウィビー:政府の検閲は必要で、より透明性を持って意思決定のプロセスを開示しなければならない。FBIや司法省は、そのような面を向上させる努力をしてきました。

 とはいえ、トランプが大統領選で勝利した時から、この大統領令が出されることは予想されていました。トランプとその仲間たちは、ずっとその必要性を語っていたからです。SNS事業者も法律家たちと対応を考えて一定の準備をしていたと思います。

 この大統領令は、トランプ政権がSNS事業者への規制から手を引くというパフォーマンスでもあります。でも、実際にこの大統領令がどんな効果や意味を持つのかは、まだよく分かりません。

──政府がSNS事業者のプラットフォームを検閲するとしたら、どのように介入すべきだと思われますか。

ウィビー:それ専門の部署を政府内に立ち上げる必要があるでしょう。この大統領令が出る前から、政府は十分にSNSを検閲する能力を有していなかったからです。それを担うスタッフ、洗練された確認技術、そのための予算などはありませんでした。

 連邦取引委員会(FTC)は少しSNS事業者を規制できました。連邦通信委員会(FCC)は取り締まっていません。米司法省には多少は企業の問題のある行動を取り締まる権限がありますが、ちゃんと検閲する能力はありませんでした。本気でやるのであれば、どのみち今のままではダメです。

 SNS事業者がどんなアルゴリズムを使っているか、分析のためのデータの開示も求めなければなりません。そして、SNS事業者を厳しく取り締まるのではなく、必要な透明性の確保をうながすよう要請していくべきです。

──Metaのザッカーバーグ氏は「ファクトチェックをやめる」と宣言しました。

ウィビー:Metaは、ファクトチェックを行う世界100以上の団体とパートナーシップを組んできました。多くはジャーナリズムによって組織された団体です。そうした団体に資金援助をしてファクトチェックを手伝ってもらっており、ケニアやナイジェリアなどでのこうした活動は特に重要です。でも、今後はやっていけなくなるでしょう。

 一方では、こうした団体や、Meta内部の人材が頑張って精査しても、取り締まることができるのは全体のごくわずか一部でした。なにせ、全世界で32億人以上が使っているアプリです。

 より重大かつ深刻なのは、MetaがAIによるファクトチェックを止めることです。そんなことをすれば世界中で多大な問題が発生します。でも、Metaはこれもやめると言っている。その結果、衝突、暴力、テロ行為がより発生する恐れがあります。既に、エチオピアなどでは、そうした兆候が現れ始めています。
 
 私の希望的観測は、Metaが引くと言いながらも、ある程度ファクトチェックの機能を残すことです。特に、問題が起こりそうな地域ではやはり継続してほしい。でも、Metaはどうするとも言っていませんし、ザッカーバーグはトランプ政権との関係を前進させたいでしょうからね。