最初にルールを変えたのはオバマ政権
中林:以前は、長官や最高裁判事など大統領による指名職の任命もフィリバスターをかけて阻止できました。ところが、2013年に民主党時代のハリー・リード院内総務が上院の単純過半数の採決によって「最高裁判事を除く大統領指名人事にはフィリバスターをかけられない」とルールを変更しました。
その後、2017年にトランプ政権が誕生すると民主党への意趣返しのように、共和党のミッチ・マコーネル院内総務が、大統領による最高裁判事の指名にもフィリバスターをかけてはならないとのルール変更を院内の単純過半数で決定しました。
つまり「最高裁判事を含む大統領指名人事にはフィリバスターをかけられない」にルール変更したのです。
ただ、立法や予算決めでは今でもフィリバスターをかけることが可能です。それでも、1つだけ裏道があります。それは、予算決議の中に財政調整措置を含めることです。
私は10年間予算委員会で働いていましたが、予算決議は予算委員会が所管します。予算決議の中に財政調整指示というプロセスを入れると、法律を改正せよという指示が予算決議の中に入るために、法律改正案を短時間でフィリバスターのない単純過半数で通すことができる。
トランプ大統領は法律や予算を議会で通したい場合、この方法を使うはずです。
1974年議会予算法によって、予算決議が制度化されましたが、予算は国民の生活に直結するので、その決議および決議内の支持による法律改正にはフィリバスターをかけられなくなりました。
この利点を初めて活用して法律を改正したのは、レーガン大統領です。予算決議ならば単純過半数で法案を通せるという一種の裏口を見つけ、便利なのでそれ以来、多くの大統領によってこの方法が使われてきました。
実際、予算委員会で10年働いた者として、こうした財政調整プロセスおよび財政調整法の成立に深く関わり、語りつくせないほどの事例を扱ってきました。
──第一次トランプ政権で首席戦略官に指名されたスティーブ・バノン氏が、かつてPBSのロングインタビューの中で、オバマ大統領が大量の大統領令を出したので、トランプ政権が誕生したときに「同じことをやろうと思った」と語っていました。