三権分立を軽んじたオバマ氏とそれを加速させたトランプ氏

中林:私もそうだと思いました。オバマ大統領は議会を差し置いて、大統領の権限でいろんなことを決めました。これはあまりにも三権分立や民主主義的な手続きを軽んじる行為でした(※)

※オバマ大統領は8年間の任期期間中に276本(一期目が147本、二期目が129本)の大統領令を出した。第一次トランプ政権は220本の大統領令を出している。

 当時、メディア各社も皆このやり方には批判的でした。前述の通り、一部のフィリバスターをなくしたのも最初は民主党でした。それを良いことに、そのやり方を増幅したのが共和党でした。

 特に、最も大事な最高裁判事の任命にフィリバスターをかけられなくしたのは共和党です。その結果、トランプ大統領の一期目のように、極端な保守の最高裁判事が次から次へと承認されてしまいました。

 60人の賛成を得るのは大変ですから、かつての大統領は気をつけて、反対側からも賛成が得られるような立派な人を指名してきたのに、第一次トランプ政権からそれが変わったのです。その時から、極端で党派的な最高裁判事でも任命できるようになったのです。

議会を差し置いて大統領権限を連発したのはオバマ元大統領だと中林氏は指摘する(写真:AP/アフロ)議会を差し置いて大統領権限を連発したのはオバマ元大統領だと中林氏は指摘する(写真:AP/アフロ)

──トランプ大統領は就任初日に「26本の大統領令」「12本の大統領覚書」「4本の大統領布告」を出しました。それぞれどう異なるのでしょうか?

中林:法律には長い名前が付き、似たものがあると紛らわしいので、大統領令には(ジョージ・ワシントン時代から続く)通し番号が付けられます。この通し番号が付くと、公式なものであるという印象が強くなります。

 一方で、大統領覚書や布告には一般的に通し番号が付かないので、威厳は少し弱まる印象があります。ただ、行政命令であることには変わりなく、大統領令、大統領覚書、大統領布告は、いずれも命令的な効力があります。2017年にトランプ大統領がTPP離脱を指示したときは「大統領覚書」でした。