トランプ政権が大統領令を連発する理由
──大きな変化をもたらす立法は議会を通す必要があり、小さな変化や一時的な対処程度のものであれば大統領令でできる、などと漠然と思っていました。
中林:大きな変化をもたらすようなものでも、議会が問題にしなければ通ります。ただあくまで行政命令ですから、行政の権限の中に収まるものでなければなりません。
議会が大統領令に対抗する方法は他にもあります。
アメリカでは、憲法の第一章第一条に「すべての立法権は、合衆国議会に属するものとし、その議会は上院および下院から構成される。」と書かれています。そして予算も立法と同じように議会で決める。そこで、大統領令が出されても、それに必要な予算を議会が付けないという対抗措置があるのです。
議会が予算を通さなければ、大統領令でも実現できない場合があります。大統領令が出されても、それを実行するための、職員の給料や事業経費が出なければ、大統領令は絵に描いた餅になってしまいます。
──実行に多額の費用がかかりそうなものは、議会が予算を付けない可能性も出るということですね。
中林:そうです。もちろん、上下両院共に共和党議員が過半数なので、なるべく大統領の意向を支えようと努力はするでしょうが、その辺はよく考えなければなりません。
──なぜトランプ政権はこれほど大統領令を使いたがるのでしょうか?
中林:議会に法案を通してもらうのが難しいからです。
上院のルールの中にフィリバスター(※)があります。フィリバスターがかけられてしまうと、議会で立法する際には60人の賛成がなければそれを止めることができず、法案は廃案になります。共和党の上院の議席数は53ですから、民主党議員から7人の賛成を取り付けなければなりません。
※議事進行妨害。演説を長時間続けて議事の進行を妨げること。