シガラの中から出てきた生き物

 この秋、坂田がシガラの中の落ち葉を見たところ、それまで見かけたことのなかったカブトムシの幼虫がゴロゴロしていた。

 カブトムシの幼虫は通常、クヌギやコナラなどの落ち葉の下におり、針葉樹林ではあまり見かけることがない。もちろん、シガラの中には落葉樹の葉が詰まっているので当然と言えば当然かもしれないが、シガラを組んでものの半年でカブトムシが卵を産み付ける場になったというのは驚きだ。他にも、サワガニやミミズの姿もあった。

 実は、「みんなの森」に作ったシガラは一度、イノシシに破壊されている。イノシシが来るということは、エサとなる生き物が多いということ。それだけ、シガラが生き物にとって快適な環境だということだ。「壊されたシガラは『イノシシに満点をもらったね』と言って作り直しました」と坂田は楽しそうに語る。

 シガラ組みと同時並行で取り組んだのは、水脈の再生である。

「みんなの森」を歩くと、作業道の下に幾筋もの水の流れがあることに気づく。これは、山に蓄えられた水が自然と染み出してできたもの。生まれたばかりの流れは沢と呼べるようなものではないが、そんな小さな流れが徐々にまとまり、一つの沢になって九鬼の海に流れ込む。

 ところが、坂田が最初に訪れた2023年12月には、積もり積もった土砂に覆われており、ある一カ所を除いて水の流れはほとんどなかった。その場所とは、坂田を招聘する前の整備の時に見つかった水脈である。それを見て、周辺にもっと大きな流れがあると感じた坂田が水脈の再生を提案したのだ。