奈良市は人口減少社会における行政と行政サービスのあり方を捉え直すため、「Local Coop 大和高原」とさまざまなプロジェクトを進めている。なぜ奈良市はLocal Coopプロジェクトを始めたのか。市長の仲川げん氏に話を聞いたインタビューの3回目。(聞き手:篠原匡、編集者・ジャーナリスト)
◎第1回:なぜ奈良市は資源ゴミの回収をLocal Coopに委託したのか?人口減少に抗う地域コミュニティの戦い【奈良市長・仲川げん氏インタビュー(1)】
◎第2回:「税制から切り離した地域を作りたい」奈良市長が夢想する、議員も市長も必要ない直接民主主義の世界【奈良市長・仲川げん氏インタビュー(2)】
──例えば、間接民主主義のデメリットのひとつとして、決定のプロセスに時間がかかる、ということが挙げられますよね。
仲川:そう、必要なのはスピード感ですよね。地域の人が何を望み、何に困っているのか。その情報を集め、行政にぶつけ、制度や予算に反映して多数決で決める。このプロセスは尊いけれども、アップデートに時間がかかります。このスピード感のなさはコロナの時に痛感しました。
コロナの時も補正予算を何回も組みましたが、予算を作り、議案にして議会を招集し、審議して決めて入札する。それだけでも数カ月のロスです。そういう民主主義のコストをどこまで許容するのか。今は当然のこととして受け入れていますが、その部分も突き詰めるべきだと思います。
──ここまでのお話はとてもよくわかりますし共感もしますが、地元の方々に理解してもらうのはなかなか難しそうです。
仲川:そうなんです。その部分については急ぎすぎていつも怒られていますが、私の100倍の時間をかけて職員が説明してくれています。
また、僕らがどれだけ言っても自分ごとにならないので、政策シンクタンク「構想日本」の「自分ごと化会議」も取り入れ、住民による課題抽出と解決のアプローチを醸成する取り組みも進めています。
*自分ごと化会議とは、無作為に選ばれた住民が地域の課題や行政の事業の見直しを考える場。政治や行政を他人事ではなく自分ごと化するための取り組み。
ややこしい利権を斬るときはトップダウンでいいけれど、社会に何かをインストールする場合は時間をかけてやる必要があると思っています。もどかしいと感じることもありますが、性急過ぎるとうまくいきませんから。
──資源ゴミの収集、コミュニティバスの運営に続くその次の取り組みは決まっているのでしょうか。
仲川:やりたいと思っているのは生ゴミを含む燃えるゴミの収集。いろいろと調整は必要になると思いますが、月ヶ瀬であればできるのではないか、と感じています。ここはやる気でどうにかなる。
あとは観光ですね。交流人口を増やして収益を得るということがまだできていません。月ヶ瀬温泉という温泉施設はありますが、宿泊施設がないため、単価が高い通年の滞在型観光がほとんどありません。
この部分は大きな課題と認識しているので、月ヶ瀬の自然資源を活かした観光と、各自がバラバラでやっている六次産業化を数珠つなぎにして、観光客に満足していただけるような仕組みを作りたいなと思っています。
──それもLocal Coopで?