市長に聞く、人口減少社会における行政の役割って何?

仲川:そうです。今検討してもらっているのは、タイニーハウスのような簡易的な宿泊もできる設備の整備。なるべく早い段階で泊まれる場所を作り、滞在型の経済を構築したい。

──Local Coop 大和高原にかなりのリソースを割いているように感じますが、月ヶ瀬など東部地域以外の奈良市民からすれば、「なぜ月ヶ瀬ばかり」という意見も出るのではないでしょうか?

仲川:奈良市の西側の住民の方々には、こういった施策が東部地区の自立につながるという説明をしています。二拠点居住とまでは言いませんが、奈良市の中心部からクルマで30分ほどのところに里山的な環境が残っているわけです。奈良市の奥座敷としての価値を訴求することで、理解いただこうと考えています。

──既に人口が減少していく時代になっていますが、人口減少社会における行政の役割をどのようにお考えでしょうか?

仲川:人口が減るのであれば、行政の役割が縮小していくのは間違いありません。その中で、行政の存在意義がどこにあるかと問われれば、住民の人たちの新たなチャレンジに向かう気持ちを突き動かし、そしてそれを掛け値なしに応援し支えていくところだと思います。

 これまでの行政は、言ってしまえばサービス業のようなものでした。「何でもやります」「365日、24時間営業です」というところで勝負していますが、当然、そうしたサービスはボランティアではなく、住民の税金が原資です。

 この「サービスをやればやるほど自分たちの負担が増えていく」という構図が社会の中で共有されなかった。それが大きな問題だったと思います。

 でも、その構図を理解すれば、高負担・高サービスを求めることが、結局は自分の首を絞めるということに気づくでしょう。DIYのように、自分たちが行政サービスの作り手に回ったほうが、よりフィットするサービスを安価に手に入れることができるということが理解できるはずです。

 その時に、住民の方々が自分たちでアイデアを出せるような環境を作ること。それが、これからの時代の行政の役割だと思います。

 もちろん、現時点ではセーフティネットとしての役割が行政には期待されているのでこの部分はとても重要ですが、何でもかんでも引き受けていられるような状況ではもはやありません。行政がパンクする前に、新しい仕組みを立ち上げるほうが結果的に地域の持続可能性は上がるのではないでしょうか。

「日本の税制から切り離した地域を作りたい」と語る仲川げん市長「日本の税制から切り離した地域を作りたい」と語る仲川げん市長