「重複立候補」の問題点

 ある小選挙区でA政党から出馬したB候補は、その選挙区を含むブロックの比例代表選挙にもA政党から立候補できます。そして、小選挙区で落選しても比例代表選挙でA政党が獲得した議席数の範囲内にB候補の順位が含まれていれば、B候補は「比例復活」として当選できるのです。ただし、その選挙区の有効投票総数の10%未満しか獲得できなかった場合、復活当選の権利は与えられません。

 政党は比例代表の候補者名簿を届け出る際、複数人を同一順位とすることができます。比例代表の当選者を決める際、同一順位の者から1人を当選者としなければならない場合は「惜敗率」で上回った候補が復活当選となります。

 惜敗率とは、小選挙区において「より惜しい負け方をした候補者は誰か」を見つけ出す指標で、候補者の得票数をその選挙区の最多得票者(=当選者)の得票数で割った比率を指します。100%に近いほど当選者に肉薄したと言えるため、惜敗率の比較によって比例名簿に掲載された同一順位の候補者に優劣をつけるモノサシとなりました。

 小選挙区で勝てる見通しのない候補であっても、比例復活の可能性があれば、候補者は懸命に選挙活動を続けるでしょう。惜敗率に左右される状況であれば、小選挙区での票の上積みが当落を決するため、活動に手抜きはできません。

 その意味では、重複立候補の制度は選挙の活性化につながっているとも言えますが、小選挙区で10万票以上を獲得しても比例復活できないケースも出ています。2021年の衆院選では、惜敗率80%台で落選した候補がいた一方、20%で復活当選したケースもありました。完璧な選挙制度は存在しないにしても、“ゾンビ復活当選”が続くようになると、現行制度への批判もいっそう強まっていくでしょう。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。