10月27日の衆議院選挙ではどんなネット世論が形成されるか(写真:AP/アフロ)

解散総選挙が10月27日に実施される。SNSなどを活用した「ネット選挙」が盛んになることが予測されるが、ネット世論は選挙結果にどのような影響を及ぼすのだろうか。2021年の衆議院選挙の際、X(旧Twitter)の投稿を分析したところ、全体の1%にも満たないオリジナルの投稿がネット上の世論を形成していた。投稿数では反自民が親自民を圧倒したが、選挙は自民党が勝利。ネット世論は必ずしも現実の反映ではないことがわかる。

(谷原 つかさ:立命館大学産業社会学部准教授)

(*)本稿は『「ネット世論」の社会学: データ分析が解き明かす「偏り」の正体』(谷原つかさ著、NHK出版新書)の一部を抜粋・再編集したものです。

 2021年の衆議院選挙の際に、私が実際に行った実証研究の結果を解説します。この研究で問うたのは、選挙期間中のX空間における世論はどのようなものであったか、ということです。以下、データ分析の方法を述べます。

 まず、X Search API*1(調査当時はTwitter Search API)を用いて、選挙期間中(選挙公示日の10月19日から投開票日前日の10月30日まで)の投稿のうち、「自民党」または「自民」または「自由民主党」を含む投稿を全て収集しました(合計364万2551ポスト、うちオリジナルポスト57万6376ポスト)。各投稿を、自民党に批判的(反自民党)、ニュートラルまたは態度不明、自民党に賛成的(親自民党)に分類し、数をカウントすることによって、ネット世論の分布を可視化しようというのがねらいです。

谷原 つかさ(たにはら・つかさ) 1986年生まれ。立命館大学産業社会学部准教授。国際大学GLOCOM客員研究員。専門は計量社会学、メディア・コミュニケーション論。東京大学経済学部卒業。中央官庁勤務を経て、2022年慶應義塾大学大学院社会学研究科より博士号(社会学)を取得。2018年関西社会学会大会奨励賞、2024年社会情報学会論文奨励賞を受賞。著書に『〈サラリーマン〉のメディア史』(慶應義塾大学出版会)、『消費と労働の文化社会学』(共著、ナカニシヤ出版)など。

 しかし、対象となった投稿は、オリジナルポストだけでも57万6376ポストあります。これらを一つひとつ、人間の目で確認して分類していくのは途方もない作業です。そこで、深層学習(ディープラーニング)を用いた教師あり機械学習の方法によって各投稿を分類しました。具体的な方法については、非常にテクニカルな話になるのでごく簡単に解説しておきます。