2000人が参加した炎上ネタは280万人の目に触れる

 ここで注意していただきたいのは、リポストは他のアカウントによってなされますので、多くの人が拡散に関わった事実はあるということです。ただ我々の手元のタイムラインに表示される言説のほとんどが、ごく少数の人によるつぶやきであるということです。

 ちなみに、拡散数1位のアカウントは小沢一郎事務所の公式アカウント、2位は一般市民、3位のアカウントは既に削除されていたため確認ができませんでした。また、最も拡散された投稿はリポスト数9422回の、共産党の小池晃議員による投稿でした(図表3)。

図表3 小池晃議員による投稿(投稿に添付されていた画像は権利の関係上省略した) 出所:日本共産党・小池晃氏のXより

 以上のように、わずかなアカウントによる投稿が広く拡散され、あたかも「ネット世論」であるかのような様相を呈することはよくあります。例えば、ネット上の炎上現象を例にとってみましょう。国際大学の山口氏が具体的な炎上事例をいくつかピックアップして調査したところ、次のようなことが明らかになりました*2

 まず、炎上に参加する(書き込みをする)人の数は炎上1件当たり2000~2500人程度。これがX上で起こったとして、それら書き込みをリポストやURLのシェア等で拡散する程度は、オリジナルの投稿者数の21.4倍でした。例えば、2000人が炎上に参加したとして、リポストやURLのシェア等を含めた総投稿数は4万2800件となります。これがさらに各ユーザーのフォロワーの目にとまることになります。

 2016年時点での平均フォロワー数は648で、このうち10%がその炎上を目にすると仮定すると、わずか2000人が参加した炎上ネタを、約280万人の人が目にすることになります。これにさらに、まとめサイトやネットニュースでの取り上げが行われると、より多くの人が目にすることになります。しかし、当初炎上に書き込みを行った人はわずか2000人でした。

 以上のように、オリジナルの炎上参加者は非常に少なくても、それを目にする人は非常に多くなるという現象がソーシャルメディアでは生じるのです。

 次に、各分類におけるリポスト数の平均を見てみましょう。