真相究明を阻む秘密主義

泉:分かりません。私もその後、石井さんが抱えていた大量の資料などを見せてもらいましたが、まあとにかくあらゆる資料が膨大にあるし、字は汚いし、とても内容を精査して実態が見えるような様相ではありませんでした。

 しかし、石井さんは家族を含め、周囲の方々に「たいへんなことを発見した」と言っていたので、何か見つけていたことは確かです。

──石井さんは重要なことは、周囲の人にも具体的な内容を話さなかったようですね。

泉:そうなんです。石井さんの秘密主義が、結果的に闇を作る1つの要因になってしまった印象もあります。

 昔からそういう人でした。私が20代の頃に石井さんの選挙を手伝っていた時ですら、「どこ行くんですか」と聞いても、行き先は言わない人でした。そもそも本人が秘密主義で、自分にしか状況が分からないようにしていた。

 そして、常に膨大な資料を集めて、片っぱしから自分で確認していく人でした。あんなに調べて追及する政治家は他にいません。

──紀藤弁護士が立ち上げた「故・石井こうき事件の真相究明プロジェクト」とは何でしょうか?

泉:紀藤弁護士が立ち上げたウェブサイトで、石井さんの刺殺に関係のありそうな情報を集めるプロジェクトです。今も時々、情報が寄せられるようですが、真相に迫るような情報はまだ出てきていません。そうこうしている内に石井さんが亡くなってからもう22年が経ってしまいました。真相はいまだ闇の中です。

長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。