市長になって届いた殺人予告

──この問題を石井さんが国会で突きつけた時、国会ではどのような反応でしたか。

泉:「国会Gメン」が結成され、チームでこの問題に取り組もうという流れがありました。当時のメンバーはまだ国会議員の中に残っていますが、あのような形で石井さんが殺害されたこともあり、調査・追及の活動は事実上ストップしてしまいました。

 石井さんの亡くなり方にはみな闇を感じました。「危ないところにはあまり手を突っ込まないほうがいい」とあの時、私も周りからずいぶん言われました。

 しかも、この問題を追及したところで、国会議員にうま味があるわけではありません。利権を叩く方ですから、群がっている国会議員や官僚などからの「やめろ」というエネルギーも働きます。

 私も明石市長になって1年目に、公共事業の予算を削減したら、殺人予告や脅迫文が自宅ポストに届くようになりました。市長最後の1年は、兵庫県警が監視カメラを設置して、警察が24時間私の自宅周辺を見ている状況でした。利権や公共事業に群がる人たちのエネルギーは凄まじいものがあります。

──今の政権与党に、特殊法人に対する問題意識や、あるいは、むしろ特殊法人を利用して利益を生み出そうという下心が根強くあると思いますか?

泉:特殊法人にも様々な組織があり、誰かが「特殊法人」や「特別会計」のシステム全体を仕切っているわけではありません。とはいえ、国土交通省と経済産業省には、こうした利権が多い。族議員、官僚、その取り巻きがつるんで、上手に裏でお金を動かせる仕組みを作っている。

 福祉分野だと、かつて話題になった「特別養護老人ホーム」などは税金で作っていたわけですが、この仕組みを取りまとめていたのは厚労族でした。当時の厚生省の事務次官も、特別養護老人ホームに補助金を付ける見返りに、社会福祉法人から賄賂を受け取って逮捕されました。

 ところが、介護保険制度になって、会計が明瞭になると族議員はほぼいなくなった。そこからお金を抜けなくなったからです。

 私は明石市長を12年やり、最後は兵庫県全体の予算要望の取りまとめの会長をしました。兵庫県内の市や町の個別のテーマに関して、考えを集約して、予算要望を財務省や国土交通省に持っていくという仕事です。

 その時に、要望書には希望する金額やスケジュールなどを書かせてもらえません。ただ「お願いします」とだけ言わされ、金額やスケジュールは財務省や国土交通省が決める。「これは本当に必要か」「もっと安くできないか」といった議論もない。官僚はお金を大事にしようとは考えていません。

 それどころか、国土交通省などでは、予算を最も大きく伸ばした課長が出世していきます。無駄遣いをすればするほど官僚は出世するんです。その結果、税金を大事にする動機は生まれずに、税金の無駄遣いをする動機が生まれてしまう。

 そんなことを続けているから、日本は子育てや教育に予算が回らないんですよ。ヨーロッパ並みの国民負担率なのに、国民の生活が苦しいのは、税金が適正に使われず、そういうところに消えているからだと私は理解しています。

──石井さんは犯罪被害者の支援もされていたと書かれています。