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 被告に対し懲役20年を求刑する――6月12日、神戸地裁で開かれたある裁判員裁判で、検察側はこのように刑を求めた。

 短髪にスーツ姿の被告は、表情を変えず、黙ってそれを聞いていた。

 13年前に殺人事件を起こし、それから11年間も逃亡を続けていたこの被告は、事件当時は未成年だった。一昨年の8月4日にやっと逮捕されたが、そこから弁護側は精神鑑定を2度も求めたものの2度とも却下され、ようやく初公判が6月7日から3日間行われた。そして12日には求刑が行われたのだった。

少女と談笑しているところをいきなりナイフで

 犯人が11年も逃亡していたという注目の事件だけに、神戸地裁前には傍聴券を求めて大勢の希望者が列をなした。法廷は100人ほども入れる大法廷だったが、抽選で傍聴券を手にした人々ですし詰め状態だった。

 ただ、裁判は異様なムードの中、行われた。というのも、裁判中においても被告の氏名さえ明らかにされなかったのである。事件当時に被告が18歳であったため、この裁判も少年法に基づいて行われたためだ。

 まずはこの事件を振り返って見よう。

 2010年10月4日の夜10時45分ごろ、神戸市北区の新興住宅地の道路脇のベンチで女子学生と談笑していた高校2年生の堤将太さんは不意に男性にナイフで襲われ、即死状態になった。自宅から5分ほど離れた場所での、突然の凶行だった。

 一緒にいた女子学生は刺した男性に見覚えはないと証言、将太さんの交友関係からも事件に繋がる関係性は浮上してこなかった。いわゆる「行きずり殺人」である可能性が高く、犯人が誰なのか分からないまま、11年もの月日が過ぎてしまったのである。