(柳原 三佳・ノンフィクション作家)
3月29日、千葉地裁松戸支部である交通死亡事故裁判の初公判が開かれました。自動車運転処罰法違反(過失致死)の罪に問われているのは、岡本貴裕被告(31)。元千葉県警行徳署の刑事課巡査部長です。
この事故の初公判が開かれる前、一通のメールが私のもとに届きました。
「この事故が『危険運転』ではなく、『過失』で起訴されたことに疑問を感じていたところ、柳原三佳さんが記事*1を書かれていた大分で起こった194km/hでの右直事故を思い出しました。
本件の事故現場は片側一車線の県道です。道幅も狭く、電柱もすぐ横に立っています。公判でも言及がありましたが、事故現場の直前の路面には『追突多し』、対向車線には『事故多し』の標示もありました。
このような道で制限速度の約3倍近いスピードを出した結果起きた死亡事故を、はたして『過失』による事故として扱ってよいのか……、疑問に思っています」
*1 (記事)一般道を時速194キロで爆走して死亡事故、なぜこれが「危険運転」じゃない
差出人は、数年前、交通問題のシンポジウムを通じて知り合った大谷正則さん(仮名)です。私自身千葉県民ですが、本件についてはほとんど報じられていなかったこともあり、大谷さんからの連絡で初めて知ったのでした。
40キロ制限道路で115キロ
事故は2022年5月30日午後8時45分ごろ、千葉県鎌ケ谷市粟野の県道で発生しました。県道を横断していた歩行者の女性(79)が、岡本被告の運転する乗用車にはねられ、左大量血胸により死亡したのです。
鎌ケ谷署は自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで、帰宅のため乗用車を運転していた岡本容疑者(当時30)を現行犯逮捕し、8か月後の2023年1月、過失傷害の罪で在宅起訴しました。