今なお続く特殊法人のブラックボックス

泉:「特殊法人」とは、たとえば「○○公団」というような、各省庁の外郭団体です。いろいろな形態がありますが、半分公的・半分民間のような法人です。そこに補助金という形で国のお金が流れている。

 特殊法人に流れ込んだお金は、その後どう使われているか分からないので、結果的に国の財政の総体は不透明になります。加えて、特殊法人は官僚の天下り先にもなっている。

 特殊法人を通して税金がどう使われているのかが検証できず、ここから国の会計がブラックボックスになっている。そこを問わないと国の財政の総体は見えないし、本当にそんなに政府にお金が必要なのかも検証できない。これが石井さんの主張でした。

 石井さんは国会議員になってすぐに「僕は会計検査院の族議員になる」と言い始めた。「道路族」「厚労族」など、様々な省庁の利益を優先する族議員がいますが、自分は利権をチェックする会計検査院の応援をしたいという意味です。

 ところが、しばらくすると会計検察院には限界があり、特殊法人やその先のお金の流れまでは調べられないと石井さんは気づきました。会計検査院とて行政組織の一部ですから、忖度や遠慮もある。

 そこで、本当に国民の側に立つ「国民会計検査院」を設立して、国民のお金が何に使われて、どこに消えているかしっかりチェックする必要があるのだと言っていました。特殊法人を通して税金がどう使われているか分からない──。今もこの闇は続いています。

──特殊法人や、その委託先の業者は常に補助金が期待できるので、成長しようとか進歩しようという意欲が起こりにくいと思います。特殊法人があることで、各産業が停滞する要因になるのではありませんか。

泉:石井さんも同じ問題意識を持っていました。「官制経済」という流れを作り、特殊法人の存在が一般企業の努力を阻害する。国民の負担ばかり増え、日本経済が30年あまりも成長していない実際の要因の1つになっていると思います。

 たとえば、道路の整備は必要ですが、仕切っている道路公団のお金の使い方は不透明です。それから、大手ゼネコンによるリニア中央新幹線の談合事件がありましたが、受注価格の引き上げが、結局は利用料金の引き上げにつながると、国民の負担としてツケが回ってくる。