「道長暗殺計画」の噂に新たな要素を加えた設定に

 この伊周による暗殺計画は、実際に噂になったらしい。藤原実資が書き残した『小右記』の目録「小記目録」に「寛弘4年8月9日」の日付とともに次のように書かれている。

「伊周・隆家、致頼を相語らひて左大臣を殺害せんと欲する間の事」
(藤原伊周と弟の隆家が、平致頼と謀り左大臣の道長を殺害しようとしたこと)

 ドラマで中村織央が演じた平致頼(むねより)という人物については、説明が必要だろう。

 第33回「式部誕生」では、平維衡(これひら)が伊勢守の国司に任じられると、道長が任命に反対。維衡が一族の平致頼と伊勢国で争っていたことを問題視し、一条天皇を説得してまで、伊勢守を交代させたことがあった。

 このとき平致頼は隠岐へ配流されているため、道長を恨んでいた可能性はある。

 今回の放送は、前述した『小右記』の目録における1行をもとにしながら「弟の隆家は計画を阻止しようとしていた」という新しい要素を加えて、物語に仕上げている。

 確かに、今回のドラマのように伊周と隆家が思いをぶつけ合っていたところを、もし誰かに目撃されていたとしたら、2人が共謀しているようにも見える。うまい設定だといえるだろう。