過酷すぎる御嶽詣で思い出された「あの人」

 御嶽詣といえば、紫式部の亡き夫・藤原宣孝(のぶたか)のことを思い出した視聴者も少なからずいたようだ。

 宣孝は「やたらと派手な格好で御嶽詣に出かけた」として、清少納言が『枕草子』でネタにしている。紫式部が日記で清少納言を辛辣に批判したのは、亡き夫のことをからかわれたからではないか……というのは、よく知られている説のひとつである。

 そんな逸話を受けて、『光る君へ』の第13回「進むべき道」では、佐々木蔵之介演じる宣孝が、派手な服装で御嶽詣に参り、まひろの父・為時から「御嶽詣にその姿で行かれたのか?」とあきれられるシーンがあった。

 これには、一視聴者として「これが『枕草子』でイジられた服装か」と思ったものである。ちなみに、この頃のまひろはまだ宣孝の妻になるとは夢にも思っておらず、「よくお似合いでございます」とニコニコしている。

 そんな経緯を踏まえて今回の「中宮の涙」を観れば、「これだけ過酷な御嶽詣に、宣孝はあんな服装で行ったのか」とそのむちゃくちゃぶりが改めてクローズアップされ、SNSで話題になるのも分かる。

 約1年と放送期間が長い大河ドラマでは、すでに退場した人物を懐かしく思い出すことが必然的に多くなる。それもまた楽しみ方のひとつだろう。