紫式部の弟・惟規のラブストーリー

 一方、後半パートは一転して、恋愛要素が強くなる。前回の予告や今回のタイトルから「彰子がいかに一条天皇に思いを伝えるのか」とワクワクしているところに、まひろの弟・藤原惟規(のぶのり)のラブストーリーが唐突にぶちこまれたのには、面食らってしまった。

 惟規は、小坂菜緒演じる女房の「斎院の中将」に会いに行くために塀を越えたところで、警固の者に捕らえられてしまった。それを聞いて「斎院の塀を越えたっていうの?」とあきれるまひろに、惟規は「歌を詠んだんだ」と解放された経緯について、自慢げに説明している。その歌とは次のようなものだ。

「神垣(かみがき)は 木のまろどろにあらねども 名乗りをせぬは 人とがめけり」
(斎院の神垣は、入って来る者に必ず名乗りをさせたという、かの木の丸殿ではないけれど、私が名乗りをしなかったので、人にとがめられてしまった)

 それを聞いた斎院の選子内親王(のぶこないしんのう)が「よい歌だから放してやれ」と許してくれたのだという。

 この一連の話は、『今昔物語集』巻二十四「藤原惟規読和歌被免語第五十七」がもとになっている。惟規が女房の部屋に入ったところを、それを見て怪しんだ斎院の侍たちに門を閉ざされてしまう。

 これには惟規だけではなく、相手の女房も困り果ててしまい、大斎院に頼んで門を開けてもらうことになった。斎院を出る際に詠んだのが、先の歌である。

 実は紫式部の弟の惟規も歌の名手で、『藤原惟規集』という歌集も残している。やはり血は争えないといったところだろう。

 ドラマでは、まひろが弟に「そういうことをやっていると、罰が当たって早死にするわよ」と苦言を呈したが、実際に惟規は早死にすることになる。まひろはつらすぎる別れをどう受け止めるのか。切なくはあるが、見届けなければならないだろう。