日頃の誠実さがいざという時に問われる

 長期政権を担ってきた首相を見るとやはり良い人材を集める求心力が重要だ。

 小泉純一郎内閣の最初の幹事長は、YKK(山崎拓、加藤紘一、小泉純一郎)として盟友だった山崎拓、同じ派閥の後輩の安倍晋三、「偉大なるイエスマン」と自称していた武部勤が務めた。武部は2005年の郵政民営化選挙で造反議員に公認を与えず、選挙を大勝に導いた。

 安倍晋三氏も櫻井よしこ氏によると学者、ジャーナリスト、官僚、政治家など有能な人材を回りに集わせていたそうだ。「一言で言えば安倍氏は世にいう人たらしだった」(『週刊新潮』9月19日号コラム)と述べている。櫻井氏は同じコラムで「高市氏は自分は同僚、先輩、後輩議員らとの交友を深めることが苦手だと告白」したことも明かしている。

 石破氏も人付き合いは苦手なようだ。14日の日本記者クラブでの討論会でも「自民党内を抑えないと首相が務まらないのでは」と聞かれて、「唯我独尊的なところはあると思っている。『正しいことを言うときは人を傷つけるということを忘れるな』と竹下登先生から教わった。まだ修行が足りず、直していかねばならないところがたくさんある」と語っている。

国民からの人気が高い石破氏だが、「永田町」での人望は乏しい(写真:共同通信社)

 人たらしとまでは言わずとも、人心を掴むことは重要だ。だが9人の中にそういう人がいるのだろうか。残念だが、誰もそうは思えない。

 固有名詞は避けるが、官房長官など主要な閣僚を務めてきた人もいる。だがその時の木で鼻をくくったような答弁を見ているととても国民の方を向いている政治家とは思えなかった。自分の不利になると露骨に不機嫌になり、答弁を拒否するデジタル好きの候補者もいる。沖縄に行くと途端に米兵の被害に心を向けたかのような態度をとる女性候補もいた。そんな中でいつでも比較的丁寧に答弁する人が石破氏だったように思う。石破氏の国民的人気は、そういうところからも来ているのだろう。