赤い大きなトラス鉄橋を渡るシーンは圧巻

 漆山駅からバイクを漕ぎ始めると、緑陰の樹々に覆われた爽やかな単線の線路が続く。風を切って走るのがとても気持ちよく、日常からの解放感にあふれる。時折、「カタン、カタン」とレールの継ぎ目を通る際の“ジョイント音”が聞こえるが、それ以外に耳に入るのは吹き抜ける風の音くらい。

高原川の清流に沿った峡谷をゆく

 しばらく走ると、崖沿いに入口上部が斜めにカットされた形状のブルーのシェッド(落石、落雪覆い)が見え、漆山第一トンネルに入る。430mの長い闇の中を自転車のライトを照らしてひた走ると、なかなかスピードが出て、夏場でも冷涼な空気を味わえる。

スノーシェッドは冬期の豪雪を物語る神岡鉄道の遺構(筆者撮影)

 圧巻は、第一トンネルを出た先、赤い大きなトラス鉄橋(第二高原川橋梁)を渡るシーンだ。橋の眼下に高原川の清流が見え、かなりの高度でちょっと足がすくむが、鉄道運行時代の車窓からも美しい眺めだったことだろう。

高度のある第二高原川鉄橋は渓谷コースのメイン
トンネルから鉄橋、そしてトンネルへと続くダイナミックな展開(筆者撮影)

 鉄橋を過ぎると真っ暗な漆山第二トンネル(285m)に突入する。このあたりの目まぐるしい展開は一種のアトラクション性が高い。飛騨の山深い大自然の中、ファミリーやカップルがお互いの足で漕ぎながら廃線跡を冒険する楽しさもある。この“アトラクション感”をホームページや動画などでわかりやすく打ち出したことが第一の成功要因だろう。