ネット空間の言論を歪める3つの「有害情報」

 1つは「誤情報(misinformation)」で、文字通り「ミス」によって生じた情報を指します。勘違い、誤解、誤読、不手際……。こうしたうっかりミスは人間にはつきものです。災害時などに誤情報が拡散されると大きな混乱を引き起こすことがありますが、発信者に悪意はありません。

 もう1つは「偽情報(disinformation)」で、あらかじめ誰かを騙す目的を持って意図的に作られたウソを指します。「虚偽」の情報でありながら、記事のスタイルやウエブ・サイトが報道機関のニュースサイトを模したケースも少なくありません。

 よく知られているのは、2016年の米国大統領選のケースです。「ローマ法王がトランプ氏の支持を表明」「ヒラリー・クリントン氏を捜査中のFBI捜査官が無理心中」といった偽情報が通常のニュースであるかのように登場し、SNSで大規模に拡散されました。

2016年の米大統領選では偽情報が大きな問題になった(写真:Belltreephotography/Shutterstock)

 これらの偽情報は報道機関のニュースを上回る規模で拡散され、選挙戦に少なからぬ影響を与えたとされています。また最近では外国勢力による情報撹乱などをdisinformationと呼ぶケースも増えてきました。

 これらとは別に「悪意のある情報(malinformation)」もあります。malは「悪意」を意味する接頭語で、勘違いさせることを狙った悪意ある情報です。字面は事実でありながら元の文脈と違う意味で引用されたり、何らかの攻撃の意図を持って発信されたりした情報を指します。