もうプラットフォーム事業者任せにできない?

 誤情報や偽情報にどう対処するのか。その議論を続けていた総務省の「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する研究会」(座長=宍戸常久・東京大学大学院教授)はこの7月16日、これまでの議論を踏まえた「とりまとめ(案)」を公表し、パブリック・コメントの募集を始めました(8月20日締め切り)。

 政府のパブリック・コメント制度は、法令の制定や改正を前提として、あらかじめ案を公表し、国民から広く意見を募る仕組みです。今回のパブコメ募集の先にも、偽情報に関する新法の制定を想定しています。

出所:デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会とりまとめ(案)を基にフロントラインプレス作成
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 総務省案はまず、対応すべき偽・誤情報を分類し、①虚偽・誇大な広告などの「違法情報」と、②災害時の救助活動を妨げたり、誤った医学情報を伝えたりする「有害情報」などに区分しています。

 これらの対策についてはこれまで、プラットフォーム事業者の自主的な取り組みに任されてきましたが、総務省案は事業者任せの施策ではだめだと総括。「デジタル空間における情報流通の健全性が脅かされ、ひいては実空間への負の影響を看過し得なくなるという強い危機感」を官民全体で持つべきだ、との認識を示しました。

 そのうえで、偽情報の投稿削除やアカウント停止、収益化の停止はプラットフォーム事業者の責務であると強調。広告の事前審査基準の策定や公表、迅速な投稿削除の実現などを目指して対応を強化するよう要請しました。国に対しては、そうした対策をスムーズに実施できるような制度をつくるべきだと求めています。

 世界では、デジタル空間にまん延する誤情報・偽情報について、国家も関与する形で規制を進めるべきとの考えが広がってきました。欧州連合(EU)諸国などを中心に、政府とプラットフォーム事業者、ファクトチェック団体などのステークホルダーが相互に協力し、誤った情報を拡散させない仕組み作りが急ピッチで進んでいます。