フェイクニュースや陰謀論などは弱いつながりの中で拡散されていく(写真:Skorzewiak/shutterstock)フェイクニュースや陰謀論などは弱いつながりの中で拡散されていく(写真:Skorzewiak/shutterstock)

 SNSのフェイクニュースを信じて拡散してしまうのはなぜか。その一つの理由として、「弱いつながり」の強さが挙げられる。社会学者マーク・グラノヴェッターが指摘したように、知り合い程度の人間関係のほうが異なる社会集団に属する個人を結びつけ、新しい情報や視点へのアクセスを可能にする。同じように、弱いつながりのほうが、ニュースを信じる傾向があるという。最新の論文をもとに、フェイクニュースが受け入れられるメカニズムを紐解く。

(小林 啓倫:経営コンサルタント)

深刻化するフェイクニュース

 7月に行われた東京都知事選でも示されたように、選挙や政治とSNSは切っても切れない関係になりつつある。特に若者層の取り込みに力を入れる陣営は、ショート動画のように、若者の間で人気の高いメディアやプラットフォームでの宣伝に力を入れており、都知事選では「切り抜き動画」(ショート動画の尺に合わせるために、あるいは短くまとめることでインパクトを出すために、演説などのイベントの一部を切り貼りした動画)の活用に注目が集まった。

 一方でそれは、SNSを通じた政治的フェイクニュースの拡散を後押しすることにもつながっている。

 英BBCの調査によれば、TikTokのレコメンデーション機能(AIが各ユーザーの視聴履歴に基づいてお勧め動画を自動で表示してくれる機能)によって若者にどのような動画が表示されているのか確認したところ、主要な政党リーダーに関する誤情報やAI生成の偽動画が推奨されるケースが確認されたそうだ。

 その中には、スナク前首相やスターマー新首相に関する根拠のない噂や、事実と異なる主張を訴えるものも見られたそうである。

 こうしたTikTok上のフェイクニュースについては、一部の動画は風刺として作成されていたものの、コメント欄ではそれを真実と誤解するユーザーが確認されたとのこと。一方で、一部は政治活動家や匿名のボットアカウントによってシェアされており、こちらについては意図的なフェイクニュースの拡散が疑われる。

 また別の調査によれば、米国の消費者の66%が、ソーシャルメディア上のニュースの76%以上が偏っていると考えているという結果が出ている。にもかかわらず、同じく米国の消費者の38%が、ソーシャルメディア上でフェイクニュースを知らずにシェアしてしまった経験があると答えている。

 また興味深いことに、主要なソーシャルメディア・プラットフォームについて、「正確なニュースを提供するプラットフォームとして信用するか」と尋ねたところ、TikTokについて「はい」と答えたのはわずか6%だった。これは主要プラットフォームの中でもっとも低い数字となっている(とはいえ他のソーシャルメディアについても、「はい」と回答したのは10~20%程度なのだが)。

 なぜニュースメディアとして信頼できず、実際にフェイクニュースが多いと分かっているはずのソーシャルメディアにおいて、フェイクを信じて拡散までしてしまうのか。その理由を説明してくれるかもしれない、興味深い研究結果が発表されている。