ガチャガチャの店舗に行くと、笑顔がかわいいぬいぐるみのガチャガチャが並んでいる。クオリアが出している「にっこりーノ」だ。フィギュアやアクセサリー類が中心のガチャガチャに、なぜぬいぐるみを投入したのか。クオリアと小川勇矢社長の物語。(尾松 洋明:ガチャガチャ評論家)
ガチャガチャといえば、フィギュアやアクセサリー類、実用アイテムといった玩具が定番であり、永らく子どものための玩具として親しまれてきた。しかし、そんな業界に、ぬいぐるみという「異端児」を投入し、市場の常識を覆したのがクオリアである。
小川勇矢氏がたった一人で立ち上げたこの会社は、創業1年目にして売り上げ8000万円を記録。その後も驚異的な成長を遂げ、2023年には売り上げ23億円を達成するに至った。この高い成長率は、ガチャガチャ業界の枠を超えた新たなビジネスモデルの可能性を示している。
新しいビジネスモデルとしてのぬいぐるみを世に送り出したのは、2019年に発売された「サメのぬいぐるみ」という商品だった。確かにぬいぐるみはわずかながらもあったが、品質的に低いものが多かった。
当時、ガチャガチャは、フィギュアやアクセサリー類などが主流であり、柔らかいぬいぐるみは物販向けとされていた。さらに、ぬいぐるみは利益率が低いとされるため、周囲からは「売れない」という否定的な声が相次いだ。
だが、小川氏はそれらの声に動じることなく、「良い商品を作ればお客さまは必ずついてくる」という信念のもと、この企画を実現した。クオリアは業界の常識を完全に無視した異例の試みに出たのだ。