「にっこりーノ」が提供した新たな視点
ブランドとしての「にっこりーノ」の人気を押し上げたのが「にっこりーノパーク」と称したリアルイベントの活用である。
2023年、秋葉原で開催されたポップアップイベントには100人以上が列を作り、期間中に数千万円規模の売り上げを記録した。また、池袋や心斎橋でも同様のイベントを開催。いずれも高い集客力を誇った。
これらのイベントは、消費者との直接的な接点を持つ機会となり、ブランドへの愛着を深める重要な役割を果たした。
「にっこりーノ」の成功は、ガチャガチャ業界全体に新たな視点を提供することになった。事実、クオリアに追従するかのように、最近は別メーカーによるぬいぐるみの商品点数が増加している。まさに、クオリアはユーザーにぬいぐるみという新しい選択肢を提示することで、市場の幅を広げたのである。
「にっこりーノ」の今後の展開として、小川氏は「『にっこりーノ』は今までありそうでなかったものをぬいぐるみとして展開しており、多様性がある。そこで企業コラボを増やしていきたい」と語る。
また国内では、『にっこりーノパークプチ』と称したカプセルトイ常設店舗を継続するとともに、『にっこりーノ』ブランドの世界観を体験できる大型イベントやコラボカフェにも挑戦していくという。
これらの取り組みにより、「にっこりーノ」は単なる商品ブランドではなく、カルチャーとしての地位を確立することを目指している。
小川氏は、「にっこりーノ」は「みんなが笑顔にできる最高のアイテム」という。消費者が何を求め、何に心を動かされるのか──。その答えを探し続けるクオリアは、これからもガチャガチャの新時代を切り拓いていくだろう。ガチャガチャの未来を照らす光は、もしかする「にっこりーノ」の笑顔にあるのかもしれない。
尾松洋明 (おまつ・ひろあき)
ガチャガチャ評論家、ライター。ガチャガチャ市場や歴史、商品情報などについて、テレビをはじめ、ラジオ、雑誌などのメディアを通じて情報発信している。朝日新聞が運営するWEBサイト「withnwes」でコラムを連載。書籍「ガチャポンのアイディアノート」(オークラ出版)