ビッグマックの値段はその国の通貨の購買力を測る上で最適?(写真:Patcharaporn Puttipon4289/Shutterstock.com)

外為市場は2024年7月に1ドル160円台を付けた後、円高・ドル安の傾向が続いています。それでもインバウンド客が途切れないなど、「安い日本」に変わりはありません。では、他国に比べて日本はどの程度、「安い」のでしょうか。そうした通貨の実力を比較する際に用いられる指標の1つに「ビッグマック指数」があります。どんな指標なのか、やさしく解説します。

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為替レートではなく「ビッグマック指数」

 今年2月、「生活実感で比較する主要7カ国の鉄道運賃」という調査レポートが注目を集めました。調査を担ったのは、一般財団法人・交通経済研究所の金谷牧代・副主任研究員。米国や英国、カナダなどの大都市近郊鉄道の普通運賃と、JR東日本の近郊運賃を比較し、国際的に低料金とされる日本の鉄道運賃が実際にはどの程度安いのかを検証する内容でした。

 金谷氏は検証の際、この「ビッグマック指数」を利用しています。乗車距離や地域条件などの似通った鉄道を比較し、それぞれの運賃を「その国の通貨でビッグマックがいくつ買えるか」によって表したのです。

 それによると、比較対象になった各国の鉄道運賃のうち最も安かったのはイタリア。ビッグマックにして0.38個分でした。逆に最も高かったのは、米国の1.98個分。日本は0.67個分で、高い方から数えて5番目という結果になりました。

 そんなふうに利用されるビッグマック指数(Big Mac Index)とは、どのようなものでしょうか。

 この指数は「物やサービスの価格水準は国をまたいでも同水準になるはず」という「購買力平価理論」に基づくもので、世界中で販売されているマクドナルドの「ビッグマック」はどこの国でもおおむね同じ材料で作られ、価格も比較的安定しているという特徴を活用しています。

 仮に、ビッグマックが米国では3ドル、日本では300円で売られているケースを想定してみましょう。購買力平価理論によると、同じ商品は同じ値段になるはずですから、この場合、理論上の為替レートは「1ドル=100円」です。

 しかし、外国為替市場での円・ドル相場が1ドル=150円だった場合、実際の通貨の実力とは1ドルにつき50円分の差が出ます。

 そうした欠点を補い、「ビッグマック1個はその国の通貨でいくらなのか」を基準にした数値がビッグマック指数です。