「定時性ランキング」はハリーアップ症候群を生み出すだけ

 特に偏西風が強くなる冬季の西行きの便では、飛行計画の段階で定時到着などしょせん無理だと思われることが多い。

 仮に100ノットの風が西から東に吹いていて、飛行時間は追い風となる東行きで30分短縮できるとしよう。では、向かい風になる西行きでは余計にかかる時間が30分かというと、そんな単純な話ではない。実際には30分をはるかに超える。

 したがって、例えば日本から米国に向かう便の場合、往路便が定時到着したとしても復路便では定時到着が困難な場合が多いのである。このように、定時発着率は運航路線によっても大きく変わることを知っていただきたい。

 以上をまとめると、定時性ランキングは条件次第で変わるので、あまり意味を持つものではないと言える。

 なお、定時性に関しては最近我が国でも問題が起きている。

 先ごろ、JALの鳥取三津子社長が一連の安全上のトラブルについて「安全性より定時性を優先してパイロットにプレッシャーを与えていた」という主旨の見解を表明した。

 これは航空会社が定時性にこだわるとパイロットたちが「ハリーアップ症候群」になってミスを犯す原因にもなると反省したものである。ハリーアップ症候群とは、時間に追われ注意力が散漫になったり、ストレスが溜まりやすくなったりすることで、重大事故につながりかねない要因とされる。

 この定時性ランキングについては、驚くことに日本の国土交通省も毎年夏に公表している。