【この記事のポイント】
- 羽田空港の誘導路で離陸待機中の台湾のエバー航空とタイ国際航空の機体が接触し、A滑走路が2時間にわたって閉鎖となった。
- 事故原因の究明はこれからだが、離陸に向けた待機中にどの位置で機体を停めていたかが焦点になる可能性がある。
- 近年は空港に混雑やゲート増、地上走行の複雑化などによって、上空よりも地上での事故のほうが増加傾向にある。
(杉江 弘:航空評論家、元日本航空機長)
幸い負傷者はなかったが…
6月10日午前11時頃に羽田空港の誘導路で、台湾のエバー航空とタイ国際航空の機体が接触し、一部が破損する事故が起きた。
両機ともにすぐに修理して再出発できない事故内容だったので、フライトはキャンセルとなり、両航空合わせて約500人の乗客をはじめ多数の利用者に影響を及ぼした。
機内の乗客の証言によると、接触時に、今まで聞いたことない大きな音や振動があったという。シートベルトの着用を指示されていたタイミングでもあり、負傷者を誰も出さなかったことは幸いであった。
しかし、この事故によって羽田空港のA滑走路が約2時間にわたって閉鎖となり、多くのフライトが着陸のやり直しを余儀なくされた。その結果、到着が大幅に遅れて、ゲートは大混乱になったと知り合いの地上職員からも連絡があった。
当該事案は国土交通省によって航空事故に認定され、今後、調査が開始されるが、事故調査報告書が出されるのは相当先になるので、筆者の経験を基に推定される原因と再発防止策について述べてみたい。