フランスの政府専用機で、G7サミットが開かれた広島に到着したウクライナのゼレンスキー大統領(提供:Ukrainian Presidential Press Service/ロイター/アフロ)

【この記事のポイント】

  • G7サミットに出席したゼレンスキー大統領が日本まで乗ってきた航空機の飛行情報が民間の航空情報サイトで追跡可能な状況だった。
  • それは航空機の飛行にはトランスポンダーという装置を利用しているからだが、バイデン大統領のフライト情報は流れていなかった。
  • テロ対策上、首脳を乗せた政府専用機の運用には慎重を期すべきだと考える。

(杉江 弘:航空評論家、元日本航空機長)

カギはGPSを使った電波に

 広島で開かれたG7サミットにウクライナのゼレンスキー大統領が対面で出席し、世界中を驚かせた。一国の指導者として勇気ある行動であったが、ロシアとの軍事的衝突が続いており安全面でのリスクもあった。

 結果的には何事もなかったが、彼が乗っていた航空機の飛行情報は、「フライトレーダー24」という誰でも使える民間の航空情報サイトで見ることができたのである。一方、米国のバイデン大統領を乗せた「エアフォースワン(大統領専用機)」の日本へのフライト情報は、必要な関係者以外、誰にも知られることなく米軍岩国基地へ着陸した。

 一体この差はどこから来るのか? 今回は航空機のフライト情報と、政府専用機の飛行情報の扱いについて考えたい。

 カギは「ADS-B」という機体から発信されるGPSを使った電波にある。