航跡、便名、高度、速度などまで分かる

 今般の広島でG7に飛来した各国の政府専用機は、米国が米軍岩国基地に着陸したのを除いて、広島空港に着陸した。政府専用機の種類は、米国がボーイング747を改造したVC-25A、フランスは空軍が運用するエアバスA300-200、英国とイタリアは空軍のエアバスA319、カナダも空軍のエアバスA330-200がベースのエアバスCC-150ポラリス、ドイツはエアバスA350、日本の政府専用機はボーイング777である。

 ちなみに、ドイツは長年、エンジンを4基搭載(4発)するエアバスA340を使用してきたが、最近はほかの多くの国と同様、エンジンが2基(双発)の機体に切り替えた。現在、日本で国名をよく耳にする国のうち、4発エンジンの政府専用機を運用しているのは米国、中国、ロシア、韓国、それに北朝鮮くらいで、今回のG7参加国の多くは双発エンジンである。

 安全性という視点では、双発より4発の方が優位にある。2月26日の本連載「なぜ米大統領専用機にはジャンボジェット『ボーイング747』が使われるのか(配信先のサイトでご覧になっている場合、下記の関連記事リンクまたはJBpressのサイトから記事をお読みください)」でも指摘したように、万が一、エンジントラブルを起こしても4発であれば、残りの3基のエンジンを使ってフライト継続できるが、双発であれば最寄りの空港に緊急着陸しなければならない。

 話を飛行情報に戻そう。航空ファンの間などでよく知られるフライトレーダー24というサイトで航空機の航跡が確認できるのは、トランスポンダー(航空交通管制用自動応答装置)という装置を利用しているからである。

 地上の管制レーダーから発射し、対象物に当たって跳ね返ってくる電波を受信することで、対象物がどこにあるのかを探知する。近年ではGPSによる衛星電波を使ったモードSが加わりハイテク機などで運用されている。

 トランスポンダーを装備していなくても、地上の軍や民間管制官はASRと呼ばれる一次レーダーによって航跡だけは把握できるが、トランスポンダーのモードSは、ADS-Bという電波を利用することで機の航跡、便名、高度、速度、上昇、降下、旋回など詳しい飛行情報を、地上と上空のほかの航空機に提供する。フライトレーダー24は、このADS-Bの電波を拾って運用されているのである。